親知らずを抜いたあと、かなり厳しい体調でした。しかし、身体を動かさないのも問題があると思い、今日は少し大胆に無理をしてタイムドーム明石のプラネタリウム番組「戦場に輝くベガ」を見てきました。
ビデオ上映していた「夢二 永遠の女(ひと) 笠井彦乃」はプラネタリウム待ちで途中まで。常設展と第5回特別展 長谷川時雨 ~その華麗なる生涯と業績~はちらりと見ただけ。
「戦場に輝くベガ」 §
東京23区の歴史資料館の1つであるタイムドーム明石の上映された映画であるにも関わらず、実はこれ、歴史関係ではなく、模型雑誌の月刊Model Graphix (モデルグラフィックス)で情報を見て知ったものです。
この模型雑誌では『爆撃機「銀河」の搭乗員と学徒動員で航空天測表を制作する女学生の話』という感じで、メカニズムや運用システムに着目した映画という印象でした。しかし、一般に流れている情報は、もっとロマンチックで甘い反戦映画的な印象になっていました。ニュアンスがだいぶ違います。
はたして、正しいのはどちらでしょう?
もちろん、タイムドーム明石は歴史資料館巡りで訪問する正当な行き先だし、「戦場に輝くベガ」は歴史を扱った映画そのものなので、敬遠する理由にはなりません。
というわけで、上映期間が終わるらしい6/15を前に行ってきました。
マニアックと必然性 §
星座解説のあと上映されたこの映画を見始めて、思わず「来て良かった!」と思いました。
何しろ、銀河の偵察員席からの主観視点で満天の星空が見えるのです。といっても分からないと思うので、もっと詳しく説明します。旧日本海軍の陸上爆撃機「銀河」の特徴の1つは、機首に設置された偵察員席にあります。この席は、前方はもちらん上下左右にもきわめて視界が広く、しかも前方に突き出しているため着陸するときは非常に怖いとまで言われることがあります。そのような、極めて視界の広い席に座る偵察員が主人公の映画です。夜間飛行中に彼が見ている満点の星空を描くには、視界に対してめいっぱい広がる映像表現が必要とされます。そして、それはまさに「プラネタリウム上映専用映画」でなければ得られないものです。銀河の機首の窓枠の外、視界いっぱいに広がる星々。それが、銀河が旋回するに従ってグワッと横に動くのです。この感覚は本当にゾクッとしますね。明らかに、銀河の偵察員による星空の物語を映像化するために、最善の選択として「プラネタリウム上映専用映画」が選択されています。単なるお涙ちょうだいの反戦映画ではなく、銀河という機体の構造をきちんと踏まえた上で作り出された映像です。
そして、天測航法の具体的な説明は、もちろんプラネタリウムを使うメリットが生きています。
更に、天測表や六分儀の実物写真、実際の過去の写真を多用した描写、登場人物は具体的に顔立ちを描いてしまわない想像力にゆだねる演出センス、エンディングに流れる子供たちの合唱曲のドラマチックな盛り上がりなど、全体として非常に良い映画になっていると思います。
いや本当に見て良かった。
本当に泣けるのは §
しかし本当に泣けるのは銀河が墜落する描写です。
偵察員の主観視点で窓枠の外の星がゆっくり上に流れていくのです。主人公は必死に祈っているのに、それが止まりません。
映像的には、窓枠の外を上に流れていく星々という描写だけです。
これは泣けます。